自分が口走った言葉と、彼女が言った言葉を思い返す。
挙式後にする、しないという話になり、
希和が嫌なら無理強いはしないと伝えた所、
彼女は“むしろ、して下さい”と言った。
二人の意見は“する”で同調した筈だ。
なのに、話が噛み合ってないだと?
急に慌てだす彼女を呆然と眺め、
俺はキッチン台に凭れ、腕を組んだ。
「分かるように説明しろ」
「えっとですね?………えぇっとですね、えぇっと………」
しきりに言葉を探している様子。
何をそんなに慌てる事があるんだ?
“する”or“しない”という、究極の話題だって口にしたのに。
今更、何があるというんだ?
さっぱり理解出来ず、俺は彼女の言葉を待っていると。
すっかり冷めてしまったカップの中のココアを一気飲みし、
彼女は胸に手を当て、自分自身に言い聞かせるみたいに口を開いた。
「京夜様、何か勘違いされていらっしゃるようですが………」
「勘違い?」
「はい。…………私が言ったお式を挙げたら“する”というのは……」
「……………ん」
「あの、…………その、…………えぇっとですね」
「ハッキリ言え。怒ったりしないから」
俺は表情を変えず、淡々と口にした。
すると、俺の顔色を窺いながら、ゆっくりと口を開いた。
「私がして欲しいと言ったのは、……………指輪です」
「………?」
「だから、指輪!結婚指輪なんです!」
「ッ?!」



