ホテルでは殆ど口に出来なかったから、

漸く食事にありつけた感じだ。


彼女が手早く蕎麦を用意してくれた。

彼女程ではないが、俺も多少緊張していたようだ。

帰宅したと同時に疲労感が出て来たのだから。


サッパリとした蕎麦を口にしながら、

少し離れたところにあるテレビに視線を向けると、

予想してた通り、俺らの事が話題にあがっていた。


「わわわわわわわっ、私がっ、映ってます!!」

「ん、だな。俺も映ってるけどな」


希和の顔が画面いっぱいに映っている。

俺はこういう状況に慣れているけど、

彼女にしてみればこれが初めてなのだから仕方がない。


彼女が普通の生活が送れなくなるのは申し訳ないが、

俺は心の底から満たされていた。


これで、彼女を狙う輩を予め排除出来るのだから。

『御影』に生まれて初めて良かったと思える。


誰一人として、彼女に近づく者は許さない。

これが独占欲というものなんだろうな。


今まで欲を出さなくても何でも手に入れて来た俺にとって、

俺が初めて欲を出したのが彼女だった。



あんぐりと口を開けたまま、

テレビに映る自分に見入っている彼女。


「食べないのか?」

「……………」


完全に放心状態のようだ。