「あっ、いえ。その、……大丈夫になりました」
「え?…………アハハッ、それは良かったわ~」
「何だ、京夜君は山菜が苦手なのか?」
俺らの会話に驚く父親。
酒を注ぐ手が止まった。
「大の男が、山菜如きに音をあげるとはな」
「っ……、いえ、もう大丈夫です」
「いいのよ?別に……」
「そうだそうだ。苦手な物が1つくらいあったってどうって事ない」
「いえ、だから、その……」
彼女の父親を前に無意味なプライドが……。
そんな俺を見て、ご両親揃って大笑い。
これ以上、言い訳をしたところで墓穴を掘るだけだ。
今まで誰かに言い訳をした事がなく、事態の収拾の仕方さえ分からない。
苦し紛れに助けを求めようと希和に視線を向ければ、
「京夜君は、希和に完全に操縦されてるな」
「へ?」
「フフッ、分からないならそれでいい」
「…………あっ」
ご両親を前にして、唯一の味方は希和だけだ。
その彼女に助け舟を求めるなんて……。
俺としたことが……。
顔から火が出そうで思わず俯いてしまった。
そんな俺に揚げたての天ぷらを差し出す母親。
「不本意かもしれないけど、家庭は女が実権を握るのが一番なのよ?」
ウフフフッと、彼女に似た可愛らしい笑みを浮かべ、
それぞれの取り皿に天ぷらを取り分けて……。



