オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



「あっ、いえ。その、……大丈夫になりました」

「え?…………アハハッ、それは良かったわ~」

「何だ、京夜君は山菜が苦手なのか?」


俺らの会話に驚く父親。

酒を注ぐ手が止まった。


「大の男が、山菜如きに音をあげるとはな」

「っ……、いえ、もう大丈夫です」

「いいのよ?別に……」

「そうだそうだ。苦手な物が1つくらいあったってどうって事ない」

「いえ、だから、その……」


彼女の父親を前に無意味なプライドが……。

そんな俺を見て、ご両親揃って大笑い。

これ以上、言い訳をしたところで墓穴を掘るだけだ。


今まで誰かに言い訳をした事がなく、事態の収拾の仕方さえ分からない。

苦し紛れに助けを求めようと希和に視線を向ければ、


「京夜君は、希和に完全に操縦されてるな」

「へ?」

「フフッ、分からないならそれでいい」

「…………あっ」


ご両親を前にして、唯一の味方は希和だけだ。

その彼女に助け舟を求めるなんて……。

俺としたことが……。


顔から火が出そうで思わず俯いてしまった。

そんな俺に揚げたての天ぷらを差し出す母親。


「不本意かもしれないけど、家庭は女が実権を握るのが一番なのよ?」


ウフフフッと、彼女に似た可愛らしい笑みを浮かべ、

それぞれの取り皿に天ぷらを取り分けて……。