卓上フライヤーを準備する希和。
その隣に野菜が盛られた大皿を置き、
そのまた隣に天ぷらの衣が入っている器が置かれた。
「天ぷらですか?」
「食べられるわよね?」
「京夜様、お好きですよね?」
俺の顔色を窺うように母娘に見つめられて……。
「天ぷらは、揚げたてが一番ですよね」
………山菜を除いては。
彼女が俺の苦手な物を知らない訳がない。
なのに、何故?
目の前の大皿には、俺の苦手な山菜が盛られている。
そんな俺の様子を見て、彼女は含み笑いを浮かべた。
「大丈夫ですよ、京夜様」
ご両親に聞かれないように俺の耳元に彼女はそっと呟いた。
何のことを言っているのか、分からない。
これはもしかして、俺を試しているのか?
ハッ、そうだ!
そうに違いない!!
苦手だと解っていて、あえて沢山用意してあるのだから。
楽しそうにお銚子が用意されたお盆を手に戻って来た父親。
そして、それに合わせたように目の前で天ぷらを揚げ始めた母親。
含み笑いのような表情が気になって仕方ない。
俺も男だ!!
惚れた女性の両親の許可を貰う為なら、
苦手な物を食べるくらい何てことない。
かかって来い! 山菜ども!!
この俺様が制してみせる!!



