帰宅すると、彼はシャワーを浴びると言って自室へと向かった。
そんな彼の為に、おつまみを作る。
夕食は済ませてあると言ってたから、軽いものでいいよね?
冷蔵庫の中からサーモンとラディッシュを取り出し、マリネを作り始める。
「はぁ…」
お酒臭くないのかしら?
わざとらしく息を吐き、自分が酒臭くないか確認してみるが、
既にアルコール臭に包まれている為、自分では分かりづらい。
でも、結構な量をがぶ飲みしたから、臭う筈なんだけど…。
普段なら完全に酔い潰れてしまう量を飲酒した筈なのに、
何故か今日は酔いきれていない。
彼のサプライズにハラハラしていて、
そのうち現れるんじゃないかと気が気でなかったから。
私は酔いたくても酔えずにいた。
いっそのこと、酔い潰れて……記憶もなくなって………
夢であって欲しいと思ったほどだから。
溜息交じりに2品目のトマトをスライスする。
そして、綺麗にお皿に盛りつけて塩麹をサッとかけると。
「悪いな、作らせて……」
「いえ、大した料理でも無いですし……」
濡れた髪をタオルで拭きながら彼が姿を現した。
「もういいぞ?後は自分でするから」
「………はい。では、シャワーを浴びて参ります」
「ん」
彼はいつも通り、カクテルを作る準備を始めた。
そんな彼と入れ替わるように私は自室へと向かった。



