自宅マンションの地下駐車場に到着しても尚、信じられずにいた。
車から降りると、すぐさま彼の傍に駆け寄って。
「京夜様?」
「何だ。………どうかしたか?」
「…………私ですよ?」
「あ?」
「だから、松波希和ですよ?」
「………意味分かんねぇ」
「だ・か・ら!相手が、私でいいんですか?」
「はぁ?」
真剣な眼差しの私と違い、彼は呆気に取られている様子。
「おいっ、今更違うとか、勘違いだとか言わせねぇぞ?」
「…………そうは言いませんけど」
「けど?」
「京夜様こそ、冗談だとか、白紙にするとか言いませんよね?」
「言わねぇよ」
「本当に?」
「しつこい!ってか、早く家に帰るぞ」
「………はい」
彼は駄々をこねる私の手を掴んで、少し強引にエレベータへと向かった。
彼の言葉が信じられないわけじゃない。
彼の表情からも、ふざけている風には感じられないし。
だけど、心の片隅で何かが燻っている気がしてならない。
不安?……いや、違う。
何か、こう……しっくり来ないというか、違和感があるというか……。
彼の背中を眺めながら、自問自答していた。



