オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



赤信号で車が停車すると、

私の手を包み込むように重なっている彼の手が僅かに動き、

ゆっくりと感触を確かめるかのように私の指先を撫で始めた。


「結納の日取りが決まった」

「………へ?」

「3月15日だそうだ」

「………」


思いもしない彼の言葉に脳内が真っ白になった。

結納?

それって、正式に婚約って事?

彼が嘘を吐くとは思わないけど、俄かに信じがたくて……。


「痛っ」

「ッ?!おいっ……。フッ、俺の言葉が信じられないか?」


私は思わず、頬を抓っていた。

そんな私を優しく見守るように彼の手が頭の上にポンと置かれた。


「………“はい”と言ったら、怒りますか?」

「フフッ、怒らねぇよ。今まで散々嫌な想いをさせたしな」


信号が青に変わり、彼は車を軽やかに発進させた。


一時は完全に諦めたこの恋。

住む世界が違い過ぎて、隣に立つ事さえ許されないと何度も思った。

それでも諦めきれず、一生秘書でも構わない。

ううん、家政婦でもいい、護衛役でも何でもいいから彼の傍にいたかった。

例え、彼の隣に私以外の女性が立つ事になったとしても……。


そんな淡い想いが、まさか本当になるだなんて……。