コツコツとヒール音を響かせて、白いコートの女性が目の前を歩いてゆく。
「ほらっ!やっぱり!!」
「ウソでしょ~?」
「おいっ、マジかよっ!」
彼女の登場と同時に、済ました顔の彼が姿を現した。
何、何っ?!……どういう事??
何で葉山さんが……?
目の前を自信に満ち溢れた表情で颯爽と通過した彼女。
「どうなってんの?」
「………さぁ」
朱夏も困惑した様子で、彼女と私を交互に見ている。
どうして彼女が彼に近づくの?
知り合いって事??
もしかして、彼女と待ち合わせしてたとか?!
だって、私とは………約束なんてしてないもの。
絵になるような二人を視線に捉えた瞬間、胸の奥がピキッと痛んだ。
「ご無沙汰しております。お変わりありませんか?」
「……………すみません、どちら様で?」
意気揚々と話し掛ける彼女とは違い、彼のトーンは相変わらず。
大衆の面前、私の元級友達という事もあり、
女性から話し掛けられても“御曹司スタイル”を保っている。
そんな小さな事一つで、心がほんの少し癒された気がした。
「以前、父の会社のパーティーでお会いしたのですが……」
「………そうでしたか。すみません、記憶になくて」
彼の一言で、その場にいる誰もが嘲笑を浮かべた。
そんな視線に耐えるように皆にキッと睨み返すと……。



