急に胸が騒ぎ出す。
別に後ろめたい事をしている訳じゃない。
犯罪に手を染めている訳じゃないのに、動揺が隠し切れない。
皆が駆け出した先に止まっている“スッゲェ車”がどういう車か、
見ないでも分かる気がする。
すると、自動ドアの先から女の子達の黄色い声が聞こえて来た。
「………希和?」
「行かなきゃ………だね」
「………うん」
このままマンションに瞬間移動したい所だが、そんな技、
持ち合わせてる筈もなく……。
『二次会が終わったら帰る』と話してある為、三次会に行く事すら出来ない。
どうしてこの場所が分かったのか?定かではないが、
御影の力をもってすれば、きっと容易い。
あれこれ悩んだところで、何も変わらないという考えに至った。
私は大きく深呼吸して外へと向かった。
「ありがとうございました~」
スタッフの声が、“ご愁傷様”と言っているように聞こえた。
店舗の外に出てみると、
同窓生達がスーパースターや芸能人でも見るかのように
好奇な視線を一心に注いでいる先に、
夜に映える白いケーニッグゼグが1台停車していた。



