私は朱夏に少し前の出来事を説明した。
支配人と話をしていた“あの人”に酷似している男性の事を。
それを聞いた朱夏は、何やら楽しそうに笑みを浮かべた。
「希和」
「ん」
「幸せ者ねぇ~」
「え?」
「だって、あんなキザな事をするって、相当ベタ惚れって事じゃない」
「っ?!………そうなの………かなぁ」
彼が私に惚れてる??
そんな事、考えたことも無かった。
好かれたいと思うし、彼に見合う女性になりたくて
毎日、必死に努力するだけでいっぱいいっぱいだから。
彼が私に対してどんな感情を抱いてるかだなんて……。
でも、常識で考えれば……そうなのかもしれない。
だけど、彼は普通じゃない。
超が付くほどのお金持ちで、プライドも高い。
だから、常識は通用しない。
思い返せば先月、同窓会について話したから、
いつ、どこで同窓会が行われるかって事は知っている。
だけど、……なぜ?
私との関係を……存在を……隠したい筈なのに。
どうして、明らかにするような真似を……。
毎日ずっと一緒にいるのに、未だに彼の考えてる事はよく分からない。
「はぁ……」
「何溜息ついてんのよ」
朱夏のつっこみに返す気力もない。
部屋に戻った私を待ち受けていたのは、
『誰が御影の御曹司のハニーか?!』という拷問トークだった。



