「あのっ、京夜様」
「ん?」
「私、…………何もご用意してないのですが……」
四六時中行動を共にしていて、
彼へのプレゼントを買いに行く時間が無かった。
ネットで注文する事も出来たけど、
直接自分の目で吟味したかったから。
………ううん、違う。
毎日すぐ傍にいれる倖せに驕って、勝手に思い込んでいた。
心が繋がっていれば大丈夫なんだと……。
彼への愛情が薄れた訳じゃない。
倖せ過ぎる日常に色ボケしたとしか言いようが無い。
ギュッと胸が抓まれる想いに駆られながら、
彼から頂いた腕時計に指先を走らせた。
「希和からは十分貰ってる」
「へ?」
「毎日旨い料理と細やかな気遣い。それに、仕事の効率化を図って無理でも時間調整してくれている事も……」
「………それは………当たり前の事で……」
「俺の傍にいてくれるだけでいい」
「っ……」
心地良いテールボイスが心に響く。
そして、再び爽やかなミントの香りに包まれた。
こんなに優しくして貰っていいのかしら?
贅沢過ぎる生活も、大好きな人と一緒に過ごす時間も。
全てが夢のような出来事なのに、それを全て叶えてくれる人。
私には勿体なさ過ぎるわ……。
「だ……ぃ………好きですっ!」
「フッ、当然だろ」
皮肉たっぷりな台詞も、照れ隠しだと解ってしまった。
だって、私を拘束する腕が更に強くなったから。
今までで一番倖せな新年を迎えた。



