「ゆっくりさせてやれなくて、すまない」
「………へっ、平気です」
「クリスマスも年越しも何もしてやれず、悪かったな」
「………いえ」
髪を這う指先に共鳴するように、彼の声音がとても優しい。
久しぶりに感じるスペシャル王子様の彼。
この所、仕事が忙しくて四六時中ピリピリしていたから。
抱き締められて高鳴る胸に反応するように、
身体中のレーダーが彼を感知している。
少しアルコールがかった吐息が降り注ぐ中、
彼のぬくもりを全身で感じていた。
すると、
「希和」
「…………はい?」
おもむろに身体が離れたかと思えば、
少し照れくさそうな表情でテーブルの引き出しから一つの箱を取り出した。
一目で分る有名ブランドのケース。
中身が高級なモノだという事が一目瞭然。
彼の唐突な行動に唖然としていると。
「クリスマスに渡すつもりが、ついつい渡しそびれて……」
「えっ?」
「好みも分らなかったから、俺の好みだけど……」
彼はそう言いながら、ケースから眩い光を放つそれを取り出した。
そして、私の手首にそれをそっと……。
男性から女性にこれを贈る意味。
―――――同じ時間を歩んで行こう
無器用すぎる彼の想いが心の奥までジーンと響いた。



