オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



「今年もよろしくな、希和」

「へ?………あっ!」


京夜様は私の目の前にワイングラスをそっと置いた。

深い紅い色をしたそのワイン。

天宮凪彩さんと三浦さんの婚約パーティーの晩に

一度だけ口にした事がある。

名前は『ポートワイン』

私好みの甘めで、ワインのタンニン(渋め)がチョコレートとよく合う。

テーブルの上には、御影百貨店に出店しているチョコレート専門店の箱が置かれていた。

いつの間に用意したのだろう?

そんな事が脳裏を横切る中、私は膝を正して……。


「明けまして、おめでとうございます。こちらこそ、宜しくお願い致します」


畏まって頭を下げると、三つ指をついた私の腕をグイッと掴んで、


「ここは会社じゃない。希和とは対等でいたい。いちいち俺に頭を下げるな」

「んっ……」


ミントの香りを纏った彼の腕に捕らわれ、

私の身体は彼のすぐ横にボスッと収まった。


「きょっ……京………ゃ……さ、ま……」


気付いた時には彼の腕の中。

ミントの香りに包まれて、シルクの布地越しに彼の心音と、

そして、ほど良いぬくもりが伝わって来た。


ギュッと拘束される身体とは反対に

壊れ物を扱うみたいに優しく指先が髪に触れる。