「今年もよろしくな、希和」
「へ?………あっ!」
京夜様は私の目の前にワイングラスをそっと置いた。
深い紅い色をしたそのワイン。
天宮凪彩さんと三浦さんの婚約パーティーの晩に
一度だけ口にした事がある。
名前は『ポートワイン』
私好みの甘めで、ワインのタンニン(渋め)がチョコレートとよく合う。
テーブルの上には、御影百貨店に出店しているチョコレート専門店の箱が置かれていた。
いつの間に用意したのだろう?
そんな事が脳裏を横切る中、私は膝を正して……。
「明けまして、おめでとうございます。こちらこそ、宜しくお願い致します」
畏まって頭を下げると、三つ指をついた私の腕をグイッと掴んで、
「ここは会社じゃない。希和とは対等でいたい。いちいち俺に頭を下げるな」
「んっ……」
ミントの香りを纏った彼の腕に捕らわれ、
私の身体は彼のすぐ横にボスッと収まった。
「きょっ……京………ゃ……さ、ま……」
気付いた時には彼の腕の中。
ミントの香りに包まれて、シルクの布地越しに彼の心音と、
そして、ほど良いぬくもりが伝わって来た。
ギュッと拘束される身体とは反対に
壊れ物を扱うみたいに優しく指先が髪に触れる。



