オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ



別に彼女を泣かせたい訳じゃない。

彼女が選んでくれた服が気に入らない訳でもない。

むしろ、嬉しいくらいなのに……。

それよりもさっきの光景が目に焼き付いてしまって。

情けないほどに、あの店員に嫉妬してる自分がいる。


「謝る必要はない」

「でも……」

「俺の方こそ、苛ついて悪かったな」

「いえ、私が試着室を離れたのが悪かったので……」


肩を落とし、俯き加減の彼女。

彼女にそんな顔をして欲しい訳じゃない。


俺は彼女の手から荷物の入った紙手提げを取り上げ、

空いた彼女の手をギュッと掴んだ。


「喉が渇いた。珈琲でも飲みに行くか」

「………はい」

「じゃあ、案内しろ」

「はいっ!」


俺が笑顔になれば、彼女も笑顔になる。

きっと、彼女の事だから

俺が気分を害した事を悔やんだに違いない。


俺が勝手に嫉妬したというのに……。




カフェでお茶をした後は

気を取り直して、ショップ巡りを再開させた。


「京夜様!このコートをお揃いで買いませんか~?」

「え?」

「ね?そうしましょ?!で、これ着て散歩でもしましょうよ~♪」

「フッ、好きにしろ」

「約束ですからねぇ?」


彼女は嬉しそうにコートに手を伸ばした。