「京夜様、これとこれならどっちがいいですか~?」
「ん~、左か?」
「こっちですね?じゃあ、これを買って来るのでちょっと待ってて下さいね?」
私は可愛らしいぐい呑みのセットを手にして、踵を返すと。
「んッ?!」
「待て、希和」
「えっ?」
「それは、俺が買うから」
「えっ、いえ、いいですよ~これくらい」
「そういう問題じゃない!」
「へっ?」
「いいから寄こせ!」
私の手からひょいっとぐい呑みを取り上げ、レジへ向かう彼。
私はすぐさま彼の後を追った。
「いらっしゃいませ~、お預かり致します」
満面の笑みを浮かべた店員さん。
視線の先は完全に京夜様にロックオン。
当の本人は視線も合わせたく無いみたいで私の方に振り返った。
その間に手際よく梱包されてゆく。
「お客様のお会計は、4212円でございます」
彼は1万円札をスッと差し出し、
カウンターの上に用意された紙手提げをサッと手にした。
「お返しは………5788円「希和」
「あっ、はい」
京夜様は店員とのやり取りはしたくないとアイコンタクトして来た。
どうせ、お釣りを渡す際に手を握られる事を予想して……。
だから、代わりに私がそれを受け取ると、
案の定、店員の眼つきが豹変した。
………まるで、私が邪魔だと言わんばかりに。



