イベント会場も徐々に落ち着きを見せ始め、
後の事を長谷川に一任し、
俺は凪彩と共にステージ裏へと移動した。
すると、天宮製薬の重役達が社長らと何やら会話している。
天宮製薬は役員が二手に分かれ、現在抗争中。
凪彩の父親である社長はあまり詳しくは語らなかったが、
どうも、抗争自体も何やら不可解な点があると言っていた。
他社の事に首を突っ込むほど、俺は暇人じゃない。
ただ、今は凪彩と三浦の事があるだけに少しばかり気にはなる。
そんな彼らのやり取りを横目に見ていると、
「京夜様」
俺のもとに希和が駆け寄って来た。
「お水は如何ですか?」
「いや、いい」
「左様にございますか」
彼女の手にはミネラルウォーターが握られていた。
「京夜様、10分後だそうです」
「………そうか」
俺はこの後、簡単な記者会見のような取材を受ける事になっている。
今回の独占販売の裏に何か隠されているのでは?と、
メディアお得意のエンタメスクープを取りたくてしょうがないといった状況。
俺は心底溜息が漏れ出していた。



