感情に浸り過ぎていたのだろう。
入学式はいつの間にか終わっていた。
一人ポツンとアタシだけが体育館に残っていた。
「バカだなぁ。アタシ・・・。まだアイツの事好きなんて。」
一人で語って一人で泣いてた。
笑っちゃうでしょ。
本当にアタシってバカ───
「バカじゃないと思うよ?少なくとも俺は。」
独り言だったのに聞かれていたという事に驚いた。
しかも、こんな話聞かれてしまったなんて・・・!
「ごめん。盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど。
遅かったからまだもしかしたらいるかなと思って。」
心配してわざわざ戻ってきてくれたんだ──。
高嶋君の優しさが胸に刺さった。
自然と涙がこぼれてくる。
「そんな泣くほど悲しい事、一人で抱え込むなよ。
俺がいるだろ?花園の友達第一号が!」
話なんて分からないだろうに、
必死でアタシの事慰めようとしてくれてた。
「そ・・・だね。」
ありがとう。
なんて言わなくても通じてるみたいだった。
高嶋君には隠し事できない。
その黒い瞳に心を見透かされてる。
ほんの、ほんの少しだけ
アイツに似てる気がした。
アタシはまだアイツに恋をしてる。

