~龍之介side~

部員は元気よく練習に戻っていった。

俺は一人、壁にもたれてしゃがみこんでいる。

「はぁ……なに、やってんだろうな 俺は」

小さくそうつぶやいた。

葵が好きだからこそ傷つけたくなくて自分で選んだ結果なのにな

「カッコわりぃな……」

本当にかっこ悪い。
今は無理だけど、いつか振り向かせてみせるからな葵。

そんなことを考えていると、隣に誰かが座った。

「坂井くん、大丈夫?」
「瀬戸……なにが?」

俺はあえて知らないフリ。

でも、彼女は俺の顔をのぞき込んできてこう言った。

「今にも泣きそうな顔してるよ? 葵のこと好きだったんでしょ?」

え…………?!

「おまっ…………!! なんで知ってんだよ?!」

彼女はフフフと笑った。

「ずっと……入学して部活に入ってから見てたからね」
「それってどういう……」

すると彼女は笑って、意地悪げに「教えなーい」と言ってきた。

そんな彼女が一瞬、可愛い小悪魔に見えた

「ちょっ、瀬戸……!!」

手を伸ばすが彼女はすでに遠く……



「あの笑顔は反則だろ……」


俺はこの小悪魔にやられた……のか?