「話があるんです 逃げないでください」
「今は、無理だよ……!」
腕を振りほどこうとしたけれど、抵抗もむなしく腕を引っ張られて……抱きしめられた。
「ひゃっ?!」
「ごめんなさい」
「離して!」
腕の中でもがいたけれど抱きしめられる力が強くなっただけ。
「そのまま……聞いてください」
「このままって……ちょっと……」
こんな状態で平常心で聞けるわけない。
それでも彼は話だした。
「僕は先週から星野さんのことを避け続けていました それから謝っておこうと思って呼び出して……結局そのあともさけることになった 別に友達なら避けることは無いのに……って一言謝って終わりのはずなのに……ってずっともやもやしていたんです」
そこで彼は一度言葉を切った。
「僕、坂井くんに気付かされるまで分かっていませんでした」
小さい声で「少し……くやしいです」とつぶやいた。
「桜井くん……」
少し間をおいて、彼は腕の力を緩めた。
私は少し離れて彼の顔を見た。
もう逃げるなんて考えてはいない。

