~龍之介side~
陽太本人は自分の気持ちに気づいてないんだろうな。
なら、俺が……
「陽太」
「なんですか?」
「好きなやつっていたりする?」
なんで俺直球で聞いてんだよ?
普通遠まわしに言うもんだろ……
陽太は少しだけ首をひねり「たぶん」と答えた。
「たぶんってなんだよ」
「分からないんです」
「何が?」
「これがそういう気持ちかってことです」
そう言ってチラッと葵の方を見た。
やっぱりそうか……
「葵か?」
一瞬体がピクリと動いた。
「……違います」
「告白はしないのか?」
「僕にそんなことは……いや、違うって言ってるじゃないですか!」
周りが少しザワついた。注目されようと別にかまわない。
「へぇ……認めないんだな」
「これがそれなのかまだ分からないですから」
「陽太は鈍すぎるんだよ、自分の気持ちもわからないのか?」
「坂井くんにどうしてそんなこと言われないといけないんですか?」
「陽太が鈍すぎるからだよ!」
「別に僕は鈍くありません」
「じゃあなんでたぶんなんて言えるんだよ」
「分かりません」
「はぁ?」
「分からないから、分からないんですよ」
このままじゃ同じことの繰り返しだ。
「……わかった、陽太がそこまで言うなら葵は俺がもらう お前には絶対ゆずらねぇ」
「えぇ、別にかまいません」
「ちょっ、ちょっと龍くん?!一体何の話を……?」
「あ、いたのか ちょうど良かった」
いたのは知ってる。心配そうに俺らを見てたことも。
でもあえて知らないフリ。あくまでもこれは演技だ。
ゆっくりと葵の方へ体を向けた。
「いたのか、じゃなくてなんで喧嘩なんて……」
そんなのお前のために決まってるだろ。
なぁ……
「葵」
俺の雰囲気がいつもと違うことに気がついたのか葵も周りも静かになった。
1回、深呼吸する。
「ずっと……好きだった 付き合ってくれ」
多分葵は赤面して陽太のことを言いそうになるだろ?

