ふぃに抱きしめられた。
「ふぇ? り、龍くん?」
彼の腕に力が入るのを感じた。
「葵……」
「な……なに?」
「……悪い、俺やっぱり陽太には渡せねぇ」
「へ? ん…………ぅ」
何が?と聞く前に顎を上に持ち上げられ……口を塞がれた。
「んぅ……」
離して欲しくて龍くんの胸をたたくけど、腕の力が強くなっただけ。
「ん…………っぁ」
息が苦しくなってきて龍くんのシャツを握り、少しだけ口を開く。
そこに彼が舌を入れてきた。
「や、ぁ…………ふ……」
いつの間にか頭の後ろに手を回されていて、逃げようとしても逃げられない。
「……は……好きだ」
1度口をはなし龍くんがそう言った。
龍くんが、私を好き?
「……りゅ、く…………ふぁ」
だんだん力が抜けてくる……
廊下でカタッと音がし、走り去る足音が聞こえた。やっと龍くんが腕をゆるめて離してくれた。
「……はぁ、はぁ」
わ、たし龍くんにキス……されたんだよね?
それに龍くんが私を好き?
どうなってるの?
「……葵が一番辛いときに無理矢理押し付けるようにして……ごめん」
いつもと違った優しい口調で言い残し、立ち去った。
龍くんが私を、好きだった……?
涙は止まっていたが、パニックでしばらく部室の前で座り込んでいた。
…………その日の夜は眠れなかった。

