「改めまして、高橋健(たかはしけん)と申します。突然伺って申し訳ございません」
ケンのフルネームを初めて知った。
そんなこと思っていた呑気な私の隣には、いつにもなく真剣な表情なケン。
「今日はちえさんとの結婚のお許しをいただきたく、伺わせていただきました」
ケンがそう言うと、母が
「結婚!?」
と驚いていた。
「はい。ちえさんとは真剣にお付き合いさせていただいております。先日、私からプロポーズをさせていただいたところ、ちえさんからはありがたいお返事をいただいたので、今日こうしてご挨拶に参りました」
ケンが軽く頭を下げた。
「高橋くん」
父が口を開いた。
「はい」
「仕事は何をされているのかね」
「Webアプリケーション開発、要はIT関係です」
ここでケンが名刺を出した。
その名刺を見て父が言った。
「代表取締役!?」
「ええ。小さな会社ですが、昨年起業いたしまして」
「社長さんなの!?」
母が言った。
ケン、社長さんだったんだ…知らなかった。
だからあんな簡単に60万もする指輪を買ってくれたり、高級ホテルのディナーを用意してくれたりしたんだ…。