「ふぅ~」
爽歌は背伸びをしながら一息ついていた。
「やっと終わったか~、あ!!」
爽歌の目に飛び込んで来たのは満天の星空だった。
引越し作業が終わる頃にはすっかり日が暮れており、あたり一面に星空が広がっていたのだ。

「わあ~綺麗...」
思わず爽歌も見とれてしまう。
都会では味わえない、田舎ならではの澄んだ空気だからこその輝きをもっている。

「私もいつかはあんな風になれるかな?」

綺麗だと思う反面、爽歌には不安もあった。
中学卒業後、なんとなく高校に入ったものの、普通科。やりたい事など全くと言っていいほど決まっていなかった。
爽サワヤカに歌ウタで爽歌。

両親がこの名前に込めた意味は一体何なのか。
果たして爽歌はその名に恥じぬよう生きることが出来ているのだろうか。
夢も見つかっていなければ、親友と呼べる友達もいない。勿論、恋などとは無縁だった。

前の学校では、できるだけ目立たない様に過ごしてきた。
「私、ちゃんとやっていけるかな?」

爽歌の胸に不安がよぎる。