「玲織奈、今までごめん。
引っ越すって聞いて、これ皆で作った」

「小早川さん、あの時はごめんね。
私小早川さんと卒業したかったから、引っ越し本当に残念って思ってるよ」

「……」


突然手渡されたメッセージカード。
それに驚きを隠せない小早川。

いつものポーカーフェイスはどこへやらだ。



驚いた顔のまま、小早川は俺を見る。
その顔はいつもの大人びた小早川からは想像も出来ない程、子供っぽい。


クスクスと笑いながら

「二人が小早川の為にって動いてくれたんだ。
少しでもここをいい想い出にして欲しいって」

そう言うと小早川は眉根を下げて、二人の手の中にあるメッセージカードを見つめた。



「……ありがとう」


本当に小さな声だったけど、小早川はにっこりと微笑んでそれを受け取った。
初めて小早川がこのクラスの皆に笑顔を見せた瞬間だったと思う。


少しだけ照れ臭そうに俯く小早川は、贔屓目に見なくても可愛いと思った。