「アキでしょ?アキの差し金でしょぉぉぉぉ?!」
「だ、だって間宮くんがこれすれば市松さんが自分のことよく思ってくれるって言って痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

霧谷君のほおを釣り上げる釣り上げる…!!
(あんんんんの年中頭ハッピーニューイヤー野郎…っっ!!)
少しどきっとしたわたしがアホみたいだ!

「あ、あのねぇ霧谷君…あーんとかはね、恋人同士がやることてあって、そーゆーのは…」
「…?でも、僕は市松さんにあーんってしてもらいたいですよ?」
「ブッッッハ?!」
口にしたお茶を吹く。
な、なんて言ったこの男…!!
顔が熱くなる。

「市松さん?!大丈夫ですか?!!」
「待って…っげほ、…き、霧谷君…はっきり言うよね…結構きみ」
「??そうですか?」
あーダメだ、なんだこの純真さは…!
今までにないタイプだよ…!

「あーんってしてくれませんか?」
「ブッッッハぁぁぁぁ?!!!」
さらに吹く。
今度は直接お願いに来たよ!
なんなんだよ!しかもお願いしといて本人がちょっと照れながら笑うなよ!!イケメンが引き立ってるなあ!!この野郎!

「な、なんで…!いっ、いったよね?!
わたし霧谷君と付き合ってないのにそんなことできるわけ…!」
「や、やっぱりダメですか…?恋人じゃないと…」
うっ…!!
濡れた子犬みたいな上目遣いでこっちを見てくる霧谷君。
色素の薄い瞳がじっとこちらを見つめてて、なんだか顔が暑くなって、視線を思わずそらした。

「…し、だけなら…」
「エ?」
「少し…だけなら…いい…よ」
「…!」

(っ!)
ダメだ。
そんなに、嬉しそうに、幸せそうに笑わないで。
胸の奥が、熱くて、苦しくなる__。

「…じ、じゃあ、その、卵焼き…でいい?」
「はい!お願いします!」

そう言って目を閉じる霧谷君。
とりあえず卵焼きをフォークに…って。
待って?

(…こ、これ、)

キスするみたい…じゃないですか…?!