霧谷君は、ふわりと微笑む。
それはとても曖昧で、繊細なものだったけれど。
この人、すごく綺麗な微笑み方をするな…。
いや、微笑み方に綺麗も何もないだろうけど。
「それに、市松さんはわからないかもしれないけど、俺と市松さんって前にあってるんですよ」
「っえっ?!」

ニコニコーとしながらさらりとそんなことを言う霧谷君。

「きっかけは確かにカツアゲの一件でしたけど、興味を持ったのはずっと前です。」
「い、いつ?!はっ?!まさか、す、す、ストーカー…」
「?!!!ち、ちちがいますよ!!ストーカーだなんて滅相もないです!!」

ぶんぶんぶんと両手を顔の前で振る霧谷君。
まぁ、この人、そうゆう小細工とか苦手そうだよなぁ…。
いい意味で素直。
悪い意味でバカ。

「それで、いつなの?わたしのことそのー、す、す、好きになったって言うのは」
「そうですねぇ…ナイショです」
「はぁっ?!!」
ニコニコーと楽しそうに笑う霧谷君。
意外とこの人Sだなおい…!
しっぽでも生えてたら今頃全稼働でぶんぶんぶん振ってるだろ…!

「そんなことより、お弁当食べませんか?俺、作って来たんですよ」
「はぁっ?!!て、手作りなの?!」
「はい!こう見えて料理は自信があって…!」
「へ、へー」

なんだこの男…女子力すらも高いぞ…!
カリフラワーとブロッコリーの違いがわからなかったアキなんかとは大違いだ…!!
(嫌でもなぁ…これ、食べていいのかなぁ)
渡されたお弁当を持ってうーんと悩む。
(わたし、霧谷君には悪いけど付き合う気ないし…。他の人にもそうして来たけど、きちんと断ったほうが…嫌でもなぁ…お弁当食べないのは失礼だよね…)

「…あの、…無理しなくてもいいですよ?」
「うえっ?」
「俺が作ってきたかっただけですし…ちょっと残念ですけど、無理させるわけにもいかないですし」

うぁぁぁ…?!!!
なんだこれ…なんでこんな罪悪感でいっぱいになるの?!