天狗娘は幕末剣士



「どうぞ」




「どうも……」




すすめられたお茶で体を温めながら、私は彼女に尋ねた。




「あの……皆さん、怖くないんですか?」




「え?」




「私達、人斬り集団なんて言われてるから、町の人達は怖がって近付こうとしません。

 なのに、ここの人達は反対で、それが不思議で……」




「……怖くないわけじゃないですよ」




目を伏せながら、彼女は答えた。




「だけど、それ以上に私達は芹沢さんに感謝しているんです」




「え……?」




「少し前、ここの長屋が不逞浪士に襲われたことがあって、その時、芹沢さんに助けてもらったんです。

 だけど、あの人が町で悪評が立ってる芹沢さんだって分かった時、

 『ああ、きっとお金や食べ物をごっそり持っていかれるんだ』

 『助けてもらわなければ良かった』

 って思いました」




彼女は、自嘲めいた笑いを浮かべた。




そして、その時のことを思い出し、懐かしむように、続きを話してくれた。




「でも、芹沢さんは私達からは何も採ろろとはしなかったんです。

 それどころか、長屋をめちゃくちゃにしたお詫びだって、一緒に長屋を直してくれたんです。

 合間には子供達の相手をしてくれたり、私達の相談にも乗ってくれました」




「そうだったんですか……」





「ええ、だから、芹沢さんには本当に感謝しているし、みんなあの人のことが好きなんです。

 町では悪人でも、私達にとっては正義の味方みたいなものですから」




その人は、とても嬉しそうに笑った。