「分かりました。
それで、簪を贈りたい方は、どんな方なんですか?」
すると、急に芹沢さんが切なそうな顔をした。
「……お梅という女を知っているか」
「お梅さん?」
そういえば、前に山崎さんから、そんな名前を聞いたことがある気がする。
八木邸によく顔を出す、若くて綺麗な女の人。
その人の名前が、確か「お梅さん」だったはず……
「愛嬌のある、可愛らしい女でな……
澄んだ目が、とても美しいのだ」
彼の横顔を見ながら、私は黙って彼の話を聞いた。
「だが、あやつはいつも悲しそうに笑うのじゃ。
ワシは、お梅の本当に嬉しそうな顔が見たくてな……」
「だから、簪を?」
「そうじゃ、しかしワシじゃどのようなものが良いか分からぬ。
そこで、お主に目利きになってもらおうと思ったのじゃ」
スッと私に鉄扇を向ける芹沢さん。
「そうだったんですね。
そういうことなら、お任せください」
私はトンと自分の胸を叩き、得意げに笑った。


