もののけは、私の喉元に剣先を突きつけた。
そしてそのまま、刀を振り上げる。
斬られる!!
思わず私は、ギュッと目を瞑った。
だけど、次の瞬間
「うっ!?」
突然、敵がうめき声を上げた。
「え……?」
恐る恐る目を開けてみると、目の前でもののけがズルズルと力なく倒れていった。
そして、倒れたもののけの後ろから現れたのは―――
「おい、お前。
大丈夫か」
髪を耳の下で1つに結った、私より少し年上だと思う、男の人。
「っあ、あの……」
「安心しろ、峰打ちだ」
彼は刀をおさめ、私に手を差し伸べてくれた。
「ありがとう、ございます……」
手を取って、立ち上がった途端、安心したせいか、どっと疲れが押し寄せてきて体が重くなった。
「あ、れ……」
フラッと目眩がして、私は倒れてしまった。
「っおい!」
すぐに彼はしゃがんで、私の顔を覗き込んできた。
「しっかりしろ!おい、お前!」
彼の声が段々と遠くなっていく。
朦朧とする意識の中、私の目に映ったのは
……浅葱色の、羽織り……
それを最後に、私は意識を手放した。