天狗娘は幕末剣士



小さく息を吐いた斎藤さんは、どこか哀しい目をして話を始めた。




「俺は、もうあんな思いはしたくないんだ。

 守れたはずの……守れるはずの命を、目の前で失いたくない」




「斎藤さん……」




「お前だってそうだ、俺はお前が斬られて死ぬのなんて、見たくないんだ」




土方さんの言っていたことは本当だった。




この人は、私のことを心配してくれて……




「斎藤さん、私……」




と、その時、私の背後から何者かが走ってくる足音が聞こえてきた。




私はバッと足音の方へ振り返る。




暗闇の中から徐々に姿を現したのは、狸のしっぽを生やした2匹のもののけだった。




「遠野杏子、だな」




「っ……」




私はグッと小太刀の柄を握る。




もののけはスラリと刀を抜き、切っ先を私に向けた。




私達も、小太刀と刀を抜く。




「でやああ!」




2匹のもののけは、声を上げて私達に刀を振るってきた。




キンッと音を立てて、私達は相手の刀を受け止める。