しばらく飛んだ後、私は静かに地面に足を下ろした。
「ここまでくれば、大丈夫かな……」
私は、ふうっとため息をつく。
それと同時に翼も消えた。
安心しきっていたその時、突然後ろから声が聞こえた。
「見つけたぞ、遠野杏子……」
「っ!?」
バッと振り返ると、そこには1匹のもののけが、私に刀を向けて立っていた。
「安心しろ、殺しはしない」
「っ嫌……!」
後ろへ後ずさると、もののけもじりじりと距離を詰める。
どうしよう……このままだと、捕まっちゃう……
そう思った直後、私は石に躓いてしまった。
「っあ……!」
足が縺れ、私はしりもちをついてしまった。
こうなったら仕方ない。
私は腰に差している唯一の小太刀に手を掛け、もののけをキッと睨みつけた。
でも、もののけは私を見て、鼻で笑った。
「どうした、手が震えているぞ」
「っそんなこと、ない……!」