涼しい風が吹くようになり、季節はすっかり秋へと変わっていた。
前川邸の庭にある木も、葉が色づき始めている。
私も、京の地理は殆ど覚えたし、ここでの生活にもだいぶ慣れてきた、のだけれど……
「大丈夫か、杏子くん」
机につっぷしている私に、山崎さんが心配そうに声をかけてくれる。
「っだ、大丈夫、です……
ただ、ちょっと……
体が、重くて……」
ここ最近、体の疲れがよくとれない。
三番組の巡察には、相変わらずついて行くように言われているし、監察の仕事も任されることが多くなってきた。
それに加え、斉藤さんの厳しい稽古……
正直、体がついて行けてない。
体中の筋肉が痛い……
仕事と稽古に追われて、休む暇なんてないし……
「俺から斉藤さんに言っておくから、今日の巡察は休んだほうが良いんじゃないか?」
「いえ、大丈夫です!行けますっ!」
「……本当に大丈夫なのか?」
山崎さんは心配していたけど、私は今日も巡察に行くことにした。
疲れを理由に休みたくないし。