天狗娘は幕末剣士



「わっ……!」




とうとう竹刀を弾き飛ばされ、その拍子に私はしりもちをついてしまった。




顔を上げると、ピッと竹刀の先が目の前に突きつけられる。




「いっぽーん、斉藤くんの勝ち」




張り詰めた空気の道場に、総司のとぼけた声が響く。




だけど、目の前の斉藤さんは微動だにしない。




私も、彼に睨まれて動けない。




「お前の剣は、甘すぎる」




ポツリと言った斉藤さん。




彼は私を見下ろしたまま、竹刀を退けようとしない。




「そんな剣では、すぐにやられるぞ」




「す、すみません……」




すると、彼は竹刀を納めて背を向けた。




いまだ座り込んでいる私に、平助くんが手を差し伸べてくれた。




「大丈夫か、杏子。

 けっこう打たれてたみたいだけど」




「あ、うん、大丈夫。

 どこも痛くないよ」




私は、平助くんの手をとり立ち上がる。




「一くん、その辺の手加減はしたんだ」




ニヤニヤと斉藤さんを見る平助くん。




斉藤さんは、そんな平助くんにはお構いなしに竹刀を片付けている。