藤堂さんは、手を後ろで組みながら、そう言った。
「そうだな、異国の奴らがデケェ黒船でやってくるような時代だ。
もののけの1匹や2匹、いたっておかしくねえよな」
永倉さんが、にししっと笑う。
「もののけだろうが何だろうが、俺にとっちゃあ、ただのかわいい娘だしな。
怖くなんかねえよ」
原田さんまでもが、あっけらかんとそう言う。
3人の答えに、私は呆気にとられてしまった。
……天狗の私を見て、笑顔でいた人達なんて初めてだ……
「まあ、そういうわけだ。
コイツは女である上にもののけ。
平隊士には、できるだけこの事を隠しておきたい」
土方さんが言うと、幹部の皆さんが一斉に首を縦に振った。
「それと、暫くの間は斎藤、お前が杏子の面倒を見てやってくれ」
「え、俺ですか?」
今までずっと真顔だった斎藤さんが、大きく目を裂いた。
それから、少し渋い顔になって土方さんに反論した。
「……この娘の面倒なら、俺より沖田の方が適任だと思いますが……」
「杏子を拾ってきたのはお前だろ。
珍しく青ざめた顔で巡察から帰って来たから、何事かと思ったら男装した娘を抱えてるしよ」
「っ土方さっ!それはっ!そのっ……!」
内緒の事だったらしく、皆さんの前で話されたのが恥ずかしかったようで、斎藤さんの顔が赤くなる。