すると、斎藤さんは優しく微笑んだ。
「……初めは、お前のことを正直良く思っていなかった。
だが、いつからだろうな。
気がつけば、いつもお前を思うようになっていた」
「え……」
「だから、あの日。
目が覚めた時に、お前がいなくて、怖かった。
また俺は、大切な人を失うことになるのかと思ってな……。
それ程、俺の中でお前の存在は大きいんだ」
そう言うと、斎藤さんは突然私を抱きしめた。
「きゃっ!」
ドキドキと心臓が早鐘を打つ。
「杏子」
斎藤さんに優しく名前を呼ばれ、私はゆっくりと顔を上げた。
すると、彼と目が合った。
「お前を失う様な事になるのが、こんなにも怖くなるとは思わなかった。
俺は、もう二度とお前を離したくはない」


