天狗娘は幕末剣士



私は、これから起こる事を全て受け入れる様に、目を閉じようとした。




その時……




「杏子!」




「え……」




ギンッと誰かが白竜さんの刀を受け止めた。




突然、私の前に現れた背中。




呼吸が乱れていて、肩が大きく上下している。




その、よく見慣れた背中が誰のものか、私はすぐに分かった。




「斎藤さん……」




「なぜ1人で行った」




「え……」




「なぜ1人で、こいつの元に行った」




振り返らず、低い声で淡々と私に質問してくる斎藤さん。




その間に、先日の池田屋でつけられた背中の傷口から血が滲んでいた。




「斎藤さん、傷口が……!

 私の事はいいですから、屯所に戻ってくださ………」




「俺の質問に答えろ!杏子!!」




斎藤さんに怒鳴られ、肩がビクッと跳ねた。




こんな風に大声を上げる彼は、初めてだった。