「命からがら里から逃げ出した私は、一族唯一の生き残りとして、もののけに追われるようになりました。

 ……そんな私をかくまってくれるような知り合いはいないし、他に頼れる当ても無くて……どうすれば良いか、試衛館の人達に相談したくて、ここまで来たんです」




「なるほどな」




ふむ……と息をついて、土方さんは腕を組んだ。




ああ、全て話してしまった。




もののけの私なんて、きっと怖がれるだけだ。




「あの、すみません。

 迷惑でしたよね、すぐに出て行きますから……」




「杏子くん」




近藤さんに名前を呼ばれ、体が強張る。




すると次の瞬間、突然近藤さんに抱きしめられた。




「えっ?!ちょ、近藤さん?!」




「辛かっただろう」




「え?」




私を抱きしめる腕の力が強くなる。




「怖かったろう、悲しかったろう、心細かっただろう……

 よくここまで来てくれた。

 頑張ったな」




彼は私の耳元で優しく呟いた。




それから、大きくて温かい手で私の背中をぽんぽんと叩いた。