平助くんは、すぐに稽古を中断して、私を土方さんの部屋に連れて来てくれた。
「で、どうしたんだよ。
2人してそんな深刻そうな顔しやがって」
仕事中だった土方さんは、コトッと筆を置いて、私達の方に振り向いた。
「……土方さん、杏子が天狗の力を使えなくなっちまったみたいなんだ」
「なに?」
私の代わりに、平助くんが状況の説明をしてくれた。
すると、土方さんはゆっくりと私に目を移した。
「本当か、杏子」
「はい……」
私は少し俯きながら、話始めた。
「どれだけ集中しても、翼が生えないんです。
翼は、力の象徴。
それが生えなければ、天狗の力は使えません。
風を操る能力や、筋力の向上、もちろん空を飛ぶこともできません」
つまり、今までみたいには戦えないということ……
「そうか……」
それだけ言って、土方さんは黙り込んでしまった。
部室に沈黙が流れる。


