すると突然、総司と斉藤さんの後ろから、狸のしっぽを持った人間が現れた。
2人も、バッと後ろを向く。
「……杏子ちゃん、しばらく会わない間に、もののけと知り合いになったの?」
「まさか!私、もののけに知り合いなんていないよ!」
「だよね、冗談だよ」
2人は、私を庇うようにしてもののけに立ちはだかった。
「昨夜は逃げられたが、今回はそうはいかないぞ」
もののけは、すらりと刀を抜くと私に向けた。
総司と斎藤さんも刀を抜いた。
すると、こんな道中で男の人3人が刀を抜いたからか、人が集まってきてしまった。
「フンっ、人間が……なぜ、その娘を庇う」
「それは、俺達も聞きたいな。
なぜ、この娘を狙う」
斎藤さんが、もののけを真っ直ぐ見据えて問いかけた。
「ほう、いいだろう。
教えてやる」
ニヤッと笑ったもののけの顔を見て、私はハッと気付いた。
まさか……こんな大勢の人の前で、私の正体を話すつもり……?!
嫌な汗がつうっと頬を伝った。