「……天狗を甘く見るな、風狸」




「でもよお、白竜さん、まだガキだぜ?

 いくら天狗でも、そんな強くねえって。

 コイツの母親だって大したことなかったしな」




「え……?」




どうして、この人が私のお母さんを知っているの……?




私の頬を、嫌な汗がつうっと伝う。




すると、風狸さんは私の方を向いて、ニヤッと笑った。




「いやあ、あれは傑作だったぜ。
 
 何度もお前の名前を呼んでたよなあ。

 お前を逃がそうと必死になってよお。

 自分は血だらけになって地面に這い蹲って……

 まあ、最後はあっけなかったけどな」




「最後って……まさか……」




「ああ、そのまさかだよ。

 俺が、お前の母親を殺したんだ!」




風狸さんがそう言った後、ザアッと風が吹き、木々の葉が擦れ音をたてた。