ちょ、ちょっと待って!
なんで、この人、私の名前を……?
「お、不思議そうな顔してんな。
そりゃあ、もののけなら誰でもお前の事知ってるさ」
もののけ?この人、もののけなの?
私が武士だと思っていた人は、どうやらもののけだったみたい。
「お前、天狗一族の唯一の生き残り、遠野杏子だろ?」
そう言って、ニヤッと笑ったのは、目の周りが黒く、狸のような顔をしたもののけだった。
「しっかし、あの状況で里から逃げ出したって言うから、どんな奴かと思ったら……
まだちっこい小娘じゃねーか」
彼は、ズイッと私に顔を近づけ、ジロジロと見てきた。
「こんなのが、白竜(はくりゅう)さん達の次に有名な風の使い手とはな」
「白竜、さん?」
「なんだ、知らねえのか?」
すると、今まで黙っていた、もう1人の人が口を開いた。
「俺が、白竜だ」
ゾクッ……
白竜と名乗った人の目を見た途端、背中に悪寒が走った。


