天狗娘は幕末剣士



それでも、もののけは全く動じず、それどころか刃はどんどん私に迫ってくる。




恐怖で体が固まりそうになったその時……




「杏子!」




もののけの後ろから斎藤さんの声が聞こえてきた。




それと同時に、もののけの胸からドッと剣先が突き出た。




すると、もののけはズルズルと倒れていき、私は解放された。




「大丈夫か、杏子」




「はい、ありがとうございます」




ホッとしたのもつかの間。




次の瞬間、私と斎藤さんの前に2匹のもののけが現れた。




斎藤さんが、私を庇うように彼らの前に立つ。




「そいつを渡せ」




「断る」




そう言って、斎藤さんは1匹のもののけに斬りかかって行った。




私も、今度こそ小太刀を抜こうとした。




だけど、相手の方が動きが速く、あっという間に私の目の前まで来た。




速い!動きが、見えない……!




そして、もののけはドスッと私のお腹に拳を埋めてきた。




「うっ……」




「杏子!」




「さい、とうさ……」




彼の名前を呼んで、私はそのまま気を失ってしまった。