天狗娘は幕末剣士



そこに立っていたのは総司。




彼の着物には、返り血が付いていた。




「終わったよ」と、彼はただ一言そう言った。




それで全てを悟った私は、何も言わずに目を伏せた。




殺されてしまったんだ、2人とも……




「斎藤くん、土方さんが呼んでるよ。

 早く行って来な」




「ああ、分かった」




斉藤さんは短く返事をすると、自分の湯飲みとお盆を持って部屋から出て行った。




その背中を見送った総司は、フッと微笑んだ。




「ホント、心配性なんだから」




「え?」




「斎藤くん、『杏子ちゃんが心配だから少しの間傍にいさせて欲しい』って土方さんと近藤さんに頼んでたんだよ」




「え……」




「優しいね、斎藤くん」




私はゆっくりと、湯飲みに視線を落とした。




わざわざ私の為に……




自分の顔が映った水面が、ゆらゆらと揺れる。




「斎藤さん……」




彼の優しさに、胸がじんわりと熱くなった。




それと同時に、何故か胸がドキドキとした。