天狗娘は幕末剣士


「お梅さん、今夜土方副長は、芹沢さんを暗殺するつもりです。

 そして、そこにあなたが居れば、一緒に殺すつもりです」




「え……」




「でも、今ならまだ間に合います。

 すぐにここを出て、どこか遠くへ逃げてください。

 お願いします!」




あなたが殺されてしまうなんて、私は絶対嫌だ。




だから、どうか……




私は、お梅さんに向かって頭を下げた。




2人の間に沈黙が流れる。




ガヤガヤとしたお店の中の話し声が、どこか遠く感じる。




そんな中、先に沈黙を破ったのはお梅さんだった。




「そう、芹沢さんが殺されてしまうのね……」




頭を上げると、彼女は眉を下げて、とても悲しそうな顔をしていた。




「何か特別なお話なんだろうとは思っていたけれど……

 驚いたわ。

 そう、あの人が……」




お梅さんはゆっくりと目を伏せた。




少しそうした後、彼女は真っ直ぐと私を見て、こう言った。




「私、やっぱり今日もあの人の所に行くわ」