思い出の中にいるきみへ

「いらない。わたしはね、あんたなんか大嫌いなのよ。嫌いな男子のキスなんか欲しくない」

「俺って、そんなに嫌われてるのか?」

 今日はいつもに増して毒舌三昧。

「この際だから言うけど。まず、その顔。なに、その無駄に整った顏。わたしはイケメンって嫌いなのよ。顔なんてね、普通でいいのよ。平凡な男子が好みなの」

 顏のこと、言われても。俺にはどうしようもないし。

「それに、背だって無駄に高いし、わたしに少し高いくらいがちょうどいいの。それから俺様みたいな喋り方、これも嫌い。優しくて、穏やかで、我慢強くて、いつも笑っている人が好きなの。あんたなんか生意気で、図々しいし、ほっといてくれないし……とにかく全てが嫌いなのよ」

 ここまで悪口を力説しなくてもいいだろ。
 要するに理玖ってヤツと俺は正反対ってことなんだろう。