それでも朝日は昇ってくる訳で。



今日もいつも通り、高校に登校してます杏です。



「ねぇ、朝から変な顔しないでくれないかな。すっごい不快。」



朝から辛辣な言葉を言うこの子は、中学に入ってすぐ友達になった君島 花梨(きみしま かりん)。



高校も同じところで、毎年同じクラスになる腐れ縁。



今年で4年目だ。




「ごーめーんー。」



気の無い謝り方をしてしまった。



悪いことしたなー…って思ってるよ、うん。



「別に謝って欲しいわけでもないんだけどさ。何でそんな暗いの。おかしいねんけど…」



花梨に隠し事は通用しない。



それは中学の頃から分かっていて、例えば忘れ物した日とか初めて告白された日とかは、すぐ看破されてすごく恥ずかしかった思い出がある。



でも、そのことを他人に言いふらしたりはしない良い子だ。ちなみに可愛い。



そんな花梨だから、何でも相談してしまう。



「あのね、花梨。キスって場所によって意味が違うんやって。知っとった⁇」



「何、いきなり。まぁ…知ってたけど。例えば、唇は愛情。首筋は執着。髪は思慕…だったっけ⁇」



…何でそんなに知ってるの、何でさも当たり前みたいな顔してるの。



「何で、そんなこと知ってるの。」




そう聞けば、何故か花梨の顔が紅くなった。頬がリンゴみたいに紅くてすごく可愛い。



「べ、別にね調べたわけやないの。ただ…好きな人がキスの意味について友達と喋ってたのが聞こえて…。
覚えちゃったのよ‼︎」




花梨の顔はまだ紅くて、少し怒鳴り気味に言ったせいかはぁはぁ言っていた。




私は、花梨の好きな人は知らない。




親友でも、無理に聞いていいとは思えないし知ってて当然な訳でもない。



でも、やっぱり知りたくって1回聞いたことがある。それは、高校に入ってすぐ花梨に好きな人が出来たから、高校1年の夏だった気がする。



"告白はしないの⁇"




私は、好きな人がいるって言う人にはこの質問しか出来ないのか。と言えるぐらいにバリエーションが少ない。



昨日の良平くんの時も同じ質問をした。



話が逸れてしまったが、その時花梨は



"しないよ。その人には好きな人いるもん。絶対に叶わない恋なんだ。"



そう言った花梨は少し哀しい顔をしていた。




「ねぇ、杏…。あのね、杏は…好きな人いるの⁇」




すこし不安な顔をした杏が聞いてきた。




正直好きな人はいるっちゃいる。
でも、それを花梨には言ったことはなかった。



「あのね、花梨。私も好きな人いるんだ。でも、その人は言えへんねん。」




だって、その人は花梨の元カレだから。



これは、言えなかった。少し言うのが怖い自分がいる。




「別に、言って欲しい訳やない。
でも1個だけ聞いていいかな⁇
その好きな人って良平くん⁇」



一瞬、ドキッとした。




何でそんな事聞くんやって思ったし、昨日髪にキスされたことを思い出したから。




「良平くんでは…ないよ。良平くんは友達やから。」




そういえば、花梨は少しホッとした顔でそっか。って言った。




きっと花梨はーーーー




ーーーーー良平くんが好きなんだろう。




「あれー⁇花梨と杏じゃん。おっはよー‼︎」




不意に大きい声が響いてビックリした。この聞きなれた声はーーー



「良平くん…」



いつもと変わらない、昨日と同じ顔をした彼。



そして、その奥で欠伸をしている猫っ毛で切れ目の彼こそが私の好きな人。



仁王 惷(におう しゅん)くん。



「おはよう、仁王、良平くん。」



花梨が可愛らしい笑顔で言った




「おはよ、良平くん。…惷くん。」



私は、未だに眠そうな惷くんに向かって言った。




「ん、はよ。杏ちゃん。」



眠そうな目をしてるけど、確かにニコッと笑って答えてくれた。



そして、4人で学校に向かった。



ここまではいつも通りの1日だ。



今日はどんな日になるのか。



楽しみだな。