その日は施設に帰り、光子さんには体調が悪いと言って部屋にこもった。


昔から、私は5歳より前の記憶がなく光子さんには事故の衝撃で記憶喪失になったんだろうと聞かされていた。


両親の名前も思い出せず身内がだれ1人名乗り出なかった私を光子さんが引き取ってくれたんだけど……。


幼稚園や学校では、記憶が無いことがおかしい、といつもいじめられていた。



中学までずっと同じ地域内で集まっていたからその虐めは継続的で、


高校は、勉強のレベルを少しあげて、あえて誰も行かないような少し離れた場所にした。


思った通り、中学までの知り合いは誰も居なくて、高校で初めて美亜にあって、友達が出来たと思った。


なのに……

「美亜にバレた……私の事嫌いになるかな……」


そんな軽い仲じゃない、と信じたい気持ちがある中、過去のトラウマが邪魔をする。


悠雅に家を教えなかったのはこのせい。