ザーッ


傘が雨の当たる音でうるさい


街ゆく人皆傘を差して晴れの日より視界が狭くなる


夕日は黒い雲に隠れてあたりはひんやりとした空気の漂う薄暗い夕方


「でねー、あそこの喫茶店入ったんだけど、新作のケーキがおいしくてっ」


美亜は上機嫌に話し続け、どんよりとした気持ちが少し楽になっていく


私の頭は悠雅でいっぱい。だから美亜がいて本当に助かる


美亜が足を止めたので、私も足を止めると


「えっ……美亜、何でここに来たの…?」


目の前には悠雅の家


「五十嵐くんに住所聞いた。音亜ずっと心ここにあらずじゃん!そんな元気ないの、音亜じゃないよっ!」


「何言ってんの?私帰るから」


「嫌なんでしょ!?別れたくないんでしょっ!?話しなよ!五十嵐くんに、本音ぶつけなよっ!!」