男はかなしみや
 
うらみや
 
ねたみといった
 
−(マイナス)の感情の雑木林を行くうちに
 
いつしか一つの
 
館に辿り着いた
 
 
男を出迎えたのは
 
老いた召使い
 
召使いは言う
 
「ここの御主人様は
 
物言わぬ主ですから」
 
男はその言葉の意味を
 
解しようとも思わなかった
 
男はしかし、この召使いには
 
興味があった
 
「こんな召使いに
 
仕えてもらいたい」
 
そう思った
 
 
二人は主の部屋についた
 
ドアを開ける
 
 
主は    いなかった
 
召使いは主を探しに行った
 
 
部屋にはロッキングチェアーだけがあった
 
 
男はそのロッキングチェアーに
 
どうしても腰掛けたくなった
 
 
男を止めることは
 
出来なかった
 
 
座った途端
 
 
天井から轟音がした
 
 
男はその余りにも恐ろしい音に
 
恐怖して死んだ
 
 
 
 
 
「ここの御主人様は
 
物言わぬ主ですから…」