また雪がちらついて来た。

拓海はこの冬空の元、灰になって消えていった。

祥太郎は落ちてくる雪を見上げた。

真由はその友達に支えられているけれど、衰弱が激しい。

「兄ちゃん、なんでいなくなるんだよ…」

空を見上げながら呟いた祥太郎を見て梓は俯いた。

突然の別れ。

辛いはずなのに祥太郎は梓の家で泣いて以降、一度も涙を見せていない。

「祥ちゃんは…」

梓は祥太郎の腕を引っ張った。

祥太郎はそっと梓を見つめる。

「悲しくないの?」

その言葉に祥太郎は息を深く吐いて

「悲しいよ。
でも、俺達はバイクに乗っていつもギリギリのラインにいる。
…覚悟はいつも出来ているよ」

そう言った祥太郎の目は冷静で、同い年とは思えない雰囲気があった。

「…ただ兄ちゃんが。
レースではなくて普通の一般道で、しかも停車中に事故に遭うなんて思いもしなかった」

祥太郎はいつ消えるかわからない悲しい笑みを浮かべた。